読書感想

『量子コンピュータとは何か』

ジョージ・ジョンソン 著   水谷淳 訳

早川書房

定価 本体1800円+税


現存する最強のスーパーコンピュータは、アメリカのロスアラモス(六十年前、世界初の原爆実験の地)にある。そのイメージは、6144個のパソコンが組み合わさっていると考えればよい。その計算能力は、一秒間に三兆回の演算を処理できる。ちなみに、電卓の達人が一秒間に一回演算できると仮定すると、三兆回処理するのに何年かかるか?1世紀は約30億秒だから、電卓の達人は1000世紀(10万年)かかる。

ところが、量子コンピュータとなると、スーパーコンピュータを遥かに凌駕してしまう。原子を13個使えば、スーパーコンピュータを越えてしまう。そして、64個使えば、約1844京6744兆回の計算ができる。スーパーコンピュータの組み合わせで、これに太刀打ちするには、地球5000個分の設置面積が必要となる。それが分子 1 個でできる。 とにかく、想像を超えた最先端科学が創り出そうとしているのが量子コンピュータ。

コンピュータの理論だって分からない。いわんや量子物理学なんて、さっぱり分からない。超極小の微粒子の世界では、同一の物体が同時に二箇所に出現したり、時間ゼロで移動したり、もう、この世の常識は通用しない。それが量子物理学の世界で、コンピュータと合体すると、SFの世界が可能になるのかも知れない。

量子コンピュータは30年以内に完成すると予想する科学者もいれば、結局失敗するという者もいる。いずれにしても、知的好奇心でワクワクする。

初心者にとっては、本書は難解不可解な最先端科学を手取り足取り教えてくれるので、大雑把な感じで分かった気分になる。おそらく、量子コンピュータ解説の本の中では一番分かりやすいと思う。