読書感想

『地球温暖化―ほぼすべての質問に答えます!―』

明日香壽川 著

岩波ブックレット

定価 本体700円+税


私が学生の頃、法学部の某教授が、「『人は人を殺してはいけない』という論理の論文は誰でも書ける。頭の良い学生は、『人は人を殺してもよい』という奇抜な論文を書く」と言うのだ。

マスコミ論で有名なたとえ話に、「犬が人間に噛み付いても記事にならない。しかし、人間が犬に噛み付いたらトクダネだ」というのがある。

だから、頭が良くて、目立ちたがり屋さんは、「奇妙な発言」をすることが多い。

東京23区の某区長さんは、「地球は温暖化していない」とか、「温暖化の原因は二酸化炭素ではない」とかを、区広報紙などで盛んに公言している。あるいは、学者の中にも「お笑いテレビ」に出演して、そうした論調を述べている者もいる。

今の時代、「奇抜な発言=テレビに出る=人気者=儲かる」であるから、そのためには「人が犬に噛み付く」ことを喜んでする人が多いのかも知れない。

本書は、目立ちたがり屋さん達の奇妙・風変わり論調に、「ひょっとしたら、そうかも知れないな〜」と思っている方へのオーソドックスな解答である。

目次のいくつかを抜粋してみます。

「温暖化は本当に起きているのですか?」

「二酸化炭素が温暖化の原因っていう証拠は?」

「二酸化炭素よりも水蒸気や太陽活動の影響のほうが大きいのでは?」

「排出量取引で二酸化炭素の排出量は減るのですか?」

「温暖化対策をすると、国際競争力が落ちるのでは?」

など、20項目ある。

その疑問に対して、第一段階で「簡単な答」、第二段階で「より深い話」という組み立てになっている。だから、非常に読みやすい。

なお、某教授は「頭の良い人間は、奇抜な論文を書くが、さらに優秀な人間は、『人は人を殺してはいけない』という論文を書く。ただし、斬新かつ奥深い論理展開でを書く」と語っていた。

(2009年11月1日)