読書感想

『平成20年版 犯罪白書』

法務省法務総合研究所 編

(株)太平洋印刷社 発行

定価 本体2858円+税


平成20年版『犯罪白書』の副題は、「高齢犯罪者の実態と処遇」である。

刑法犯認知件数は、平成14年をピークに5年連続で減少している。世間では犯罪数は増加していると思われているが、真実は減少しているのだ。ところが、高齢者(65歳以上)の犯罪だけは急激に増加している。

高齢者人口が増加しているので、高齢者犯罪も当然増加している…という話ではない。高齢者人口の増加率をはるかに上回る比率で高齢者犯罪が増加しているのだ。

高齢者人口10万人当たり高齢者一般刑法犯検挙人員は381人(男284人、女97人)で10年前の約2.5倍に上昇している。

総検挙人員に占める各年齢層の構成比を見ると、20年前は高齢者は2%に過ぎなかったが、今や、13%もいる。数年後には、「犯罪者の半数が高齢者に」という懸念さえある。

犯罪の種類(殺人、強盗、障害、暴行、窃盗、遺失物等横領)をみると、どの犯罪でも高齢者は激増している。しかし、とりわけ窃盗が目立ち、高齢者犯罪の61%が窃盗である。ちなみに、全体では49%が窃盗犯である。

万引きして、走って、転んで、捕まった…という悲しい光景が目に浮かぶ。

さて、再犯・常習高齢者はさておいて、問題は、高齢になって初めて罪を犯す高齢初犯者である。高齢者犯罪の53%は初犯。その背景は意外にも「経済的不安」は少なく、顕著なのは、「頑固・偏狭な態度」、「自尊心・プライド」である。これは、どうも対策が難しい感じ……。

これに対して、高齢の再犯・常習犯の背景は、「経済的不安」、「開き直り・甘え(高齢だから多少の違法は見逃してもらえる)」、「あきらめ・ホームレス志向」、「問題の抱え込み(誰に相談すればよいのか分らない、迷惑をかけたくない)」の比率が高い。こちらの方は高齢者福祉を充実させれば減少できそうな感じがする。

なんにしても、高齢者犯罪激増をストップさせる処方箋を考えなければ、「刑務所の老人ホーム化」なんてアホなことになりかねない。

(2009年2月1日)