読書感想

『精神障害者が働き続けるには』

やどかりブックレット編集委員会 編

やどかり出版

本体価格1000円


精神障害者は現在250万人。国民の約3%である。毎年10万人以上の増加傾向を示している。この数字には、一過性の者も含まれているが、それにしても大変な数字であり、ストレス激化進行中であることが分かる。精神障害者は、身近に必ずいるが、偏見と誤解の中にあると断じてかまわない。

10年前から、やどかり情報館(精神障害者福祉工場)が開設し、その事業の一環として、精神障害者が自らの体験を語ることで、偏見・誤解を改め、正しい理解を求めようという趣旨で、出版文化活動を始めた。もちろん、自分を語ることは、自分を知ることであるから、治療的効果もあるようだ。

本書は、その一冊で、三人の体験談・思い出が掲載されている。

さて、昭和18年4月から精神障害者の雇用促進が一応は法定化されたが、企業のみならず一般国民の間での理解の程度は、はなはだお寒い状態である。本書の題名は「精神障害者が働き続けるには」とあるが、容易なことではない。たとえば、「一週間三日、しかも一日三時間が限界」の人、あるいは、「玉ねぎの皮をむいて」「半分に切って」と一つ一つ具体的な指示がないと動けない人、仕事中に「宇宙からの交信が始まった。静かに」とささやく人…、そうしたことを周囲が理解していないと、「就職したが、一ヶ月後には退職」となってしまう。

精神障害者が働き続けるには、金銭的課題と同時に周囲の正しい理解が必要。どうも、「善意はあっても、正しく理解していない」が多いのが実態であるようだ。

なお、やどかり出版は、電話048-680-1891です。