本書は、森林セラピーの入門ガイドである。
飛行機から地上を見下ろすと、間違いなく日本は「森林列島」である。しかし、森林の荒廃、林業の衰退が語られるようになって、もう随分になる。森林・林業の復活には、単に木材業だけに焦点をあてるのではなく、何かしら「プラスα」が必要ではなかろうか。いつの頃か、漠然と「木質バイオマスと森林療法」が「プラスα」に当たるのではなかろうか……と思うようになった。
新技術による木質バイオマス(おが屑、樹皮、端材、枝、葉、根、間伐材)のエネルギー化は、地球温暖化防止の観点から脚光を浴びつつある。遠からず、山間部の都市では、木質バイオマスエネルギーが石油に取って替わる可能性がある。
森林療法は、日本では、まだ「初めの一歩」の段階である。約20年前に、「森林浴」なる言葉が使用され始めた。森林にはフィトンチッドなる揮発性の物質が漂っていて、どうやら人間の生理機能の促進に効果があるらしい。
ドイツでは、森林療法は自然療法(クナイプ療法)の一貫として、健康保険の適用にすらなっている。医療職やガイドのアドバイスを受けて、森林散策、森林の中での体操、自然素材の完全食、薬草の飲食物などを組み合わせたメニューとなっているようだ。
日本では、森林地帯にホテルや保養所が数多く存在するが、大半は「目で緑を見る」だけ。あとは、豪華料理、カラオケ、温泉に入って……。そうは言っても、日本でも、認定された森林セラピー基地が31か所ある。森林列島にしては、いかにも少なすぎるが、徐々に普及されていくことだろう。
本書には、31箇所の森林セラピー基地の中で、以下の10箇所での体験ルポが紹介されいる。
(2009年6月28日)